住宅ローンは元利均等返済と元金均等返済のどっちを選ぶべき?
住宅ローンの返済方法には、元利均等返済と元金均等返済のどちらか一つを選択することができます。総返済額としては元金均等返済の方が少なくて済むのですが、元金均等返済を選ぶ人はあまりいません。
そもそも銀行も元利均等返済前提で話を進めることがほとんどとなっています。
それはどうしてなのでしょうか。
元利均等返済と元金均等返済
元利均等返済と元金均等返済は毎月のローン返済額の返済方法の違いです。
住宅ローンは借入れであるため当然借りた金額「元金」に対する利息がかかります。
そのため、住宅ローンの返済は元金の返済と同時に利息も合わせて支払う必要があります。
利息はまだ返済されていない残高に対して常にかかってきます。
最初3,000万円の借入れであった場合は3,000万円×○%の支払利息、返済が進み残高が1,500万円となれば1,500万円×○%というように残りの元金に対して常に利息がかかります。
毎月の返済額においては、元本にかかる返済と元本にかかる支払利息にかかる部分があり、元利均等返済と元金均等返済はその元本と支払利息の毎月の返済額に占める比率の違いになります。
元利均等返済は、「元利」つまり元金と支払利息を合わせた毎月の返済額が一定額となる返済方法です。
そのため、毎月の返済額が一定額となるように、利息と元金の金額を調整します。
支払利息は、元金に対してかかるため、元金の金額が大きいほどその支払利息の金額も大きくなります。
そのこともあり、返済期間の最初の方は、元金がたくさん残っている分支払利息も大きくなり、毎月の返済額を一定額にしようとすると、毎月の返済額に占める利息の割合が大きくなります。最初のうちは毎月の返済額に占める支払利息の割合が高く支払利息中心に支払っていくことになるので、元金部分が少なく元金が減りにくくなります。
一方、元金均等返済は、「元金」が一定額になる返済方法で毎月の返済する元金が一定額となります。毎月返済する元金は一定金額だとしても、その元金に対する支払利息は残高によって変わり、最初の元金残高が大きいうちにはその分支払利息が大きいため、返済期間の最初のうちは毎月の返済額が多くなります。
元利均等返済と比べると最初から元金を多く支払うため、元金が減りやすく、元金を減らすということは支払利息の減少につながるため、支払利息は元利均等返済に比べて少なくなります。
元利均等返済よりも元金均等返済の方が総返済額も少なくなりますが、返済期間の最初の方は毎月の返済額が多くなります。
<元利均等返済と元金均等返済> | ||
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元利均等返済 | 元金均等返済 | |
毎月の返済額 | 一定額 | 最初のうちは多く、返済期間終盤では少なくなる |
元金 | 最初のうちは少しずつ返済 | 一定金額で返済 |
総返済額 | 多い | 少ない |
このように、元利均等返済と元金均等返済で比べると、元金均等返済額の方が最初のうちの返済額が多いものの総返済額は少なく済むことになります。それではどのぐらい違いがあるのかについて、見ていきましょう。
<金利1%のときの元利均等返済と元金均等返済の違い> | ||
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元利均等返済 | 元金均等返済 | |
借入金 | 3,000万円 | |
金利 | 1%(固定金利) | |
借入期間 | 35年 | |
毎月の返済額 | 84,685円(一定金額) | 最初のうち96,000円程度 後半 71,000円程度 |
支払利息 | 5,589,995円 | 5,284,523円 |
総返済額 | 35,589,995円 | 35,284,523円 |
元金均等返済にすると元利均等返済と比べてどれだけ総返済額が減る?
元利均等返済と元金均等返済とで、最初のうちは元金均等返済の方が毎月の返済額が約1万円高くなりますが、後半においては逆に元金均等返済の方が毎月14,000円弱少なくなり、総返済額は元金均等返済の方が30万円少なく済みます。
このように元金均等返済額の方が明らかに総返済額は減るのに、元金均等返済が選ばれていないのはなぜでしょうか。
それは、元金均等返済の変動金利におけるリスクにあると考えられます。
元金均等返済のリスク
住宅ローンの金利には、金利が常に変動する変動金利と金利が常に変わらない固定金利があります。
変動金利は返済中も金利が変動し短期金利を基準として適用金利が決められています。一方、固定金利の方は、期間中金利は一定で最初の契約時から総返済額は変わらず、10年もの国債という長期金利を基準としています。
金利は短期が低く、長期になるほど上がるため、同時期で比べると固定金利の方が高くなります。
固定金利において元金均等返済は、最初のうちに返済額が多くなってしまうものの、総返済額が少なくなるのでおすすめです。
最初のうちに返済額が多くなってしまうものの、固定金利でも1.88%程度と低金利である現在においてそれほど元利均等返済に比べて大幅に増えるわけではなく、最初のうちの毎月の返済額が返済できそうであれば問題ありません。あとは、毎月の返済額は減っていくだけです。
一方で、変動金利における元金均等返済には注意が必要です。
現在、超低金利で、変動金利であれば0.5%以下の水準で借りることができ、現在住宅ローン利用者の70%が変動金利を選択しています。
変動金利は金利が低いものの、返済中も常にそのときの金利情勢を適用金利に反映させるので、毎月の返済額と総返済額が変わる可能性があります。
変動金利のリスクは金利上昇時にその金利を反映して返済額が増えることですが、基準とする金利はここ10年ぐらい変わっておらず、今後金利が大きく上昇する可能性も低いことから多くの人が固定金利に比べて返済額を抑えられる変動金利を選択しています。
変動金利は基準となる金利が上がれば適用されている金利が上がり、毎月の返済額が増える可能性があります。しかしながら、長期で返済している住宅ローンにおいて急に返済額が増えてしまうと対応できず返済できない恐れがあります。
そのため、金利が上昇して返済額が急に増えて返済できないことがないよう、変動金利には特有の「5年ルール」「1.25倍ルール」というのが設けられています。
5年ルールは毎月の返済額は5年間据置で変わることがありません。
1.25倍ルールは変動金利では金利が変動してもすぐには返済額には反映されません。
実際の適用金利は6ヶ月ごとに見直されていますが、5年間は毎月の返済額が変わらないように調整されます。
金利が下がれば毎月の返済額に占める元金の割合を高くし、金利が上がれば支払利息の割合を高くすることで調整し、5年毎に最終的に返済額が増えることになればそのときに毎月の返済額が増額します。
逆に減ることとなればそのときから毎月の返済額は減ることになります。
5年毎に毎月の返済額が変わることになるのですが、5年毎でも急に毎月の返済額が増えては困ります。
そこで、急に金利上昇して5年毎の返済額の見直しで毎月の返済額は増えるときには、その前の返済額の1.25倍までと上限が設けられています。
例えば、5年毎の返済額の見直しで、その前の毎月の返済額が10万円だったところ15万円になることになったときには、実際には15万円とならず1.25倍を超えない12万5千円に調整されます。
ただ、本来支払うべきだった15万円との差額25,000円は将来に繰り延べられ、その後金利が下がればそのときの減少分と調整されますが、そのまま金利上昇が続き調整できなかった場合には、借入期間終了時に一括返済する必要があります。
したがって、1.25倍ルールは金利上昇による急な返済額の急増を抑えることができますが、上限を超えた分は返済を免れるわけではなく繰延べされるだけとなることに注意が必要です。
このように、変動金利は現時点で非常に金利が低いというメリットがある一方で、金利が急上昇すれば急に返済額増えるリスクがあるため、「5年ルール」「1.25倍ルール」で急な増額にならず増額されてもその準備ができるように、調整できるようになっているのです。
しかしながら、この「5年ルール」「1.25倍ルール」は元利均等返済でできるルールは、元金均等返済では利用できません。
元利均等返済は毎月の返済額が一定で、その返済額中で元本と利息の支払い分を調整するため、「5年ルール」「1.25倍ルール」のようなルールを設けることが可能となっています。
一方で、元金均等返済は、元金が一定で元金に対する利息で毎月の返済額が決まっているので、6ヶ月毎の金利見直しで支払利息は変わればその分毎月の返済額も変動します。
そのため、元金均等返済の場合には毎月の返済額が6ヶ月毎に変わる可能性があり、金利が急上昇すれば急に毎月の返済額が10万円から15万円になったということがあり得るのです。
幸い、現状そんなに金利が急上昇する見込みはありませんが、35年のような長期間借りる場合には金利がどのようになるのか想定もしづらいことから、毎月の返済額がぎりぎりという場合は元利均等返済を選択する方が、「5年ルール」「1.25倍ルール」が適用され安心です。
元利均等返済が最適な人
元金均等返済の方が総返済額は少なく済むので、総返済額をできるだけ少なくするためには元金均等返済がおすすめではありますが、住宅ローンを長期できちんと返済するためにも以下のような場合は元利均等返済を選択した方がおすすめです。
①変動金利で借りている
前述の通り、元金均等返済で借りていると「5年ルール」「1.25倍ルール」は適用されません。変動金利の金利上昇時における急な返済額増加に備えて、「5年ルール」「1.25倍ルール」が適用される元利均等返済を選択するのは長期間の返済を続ける上では安心です。
②低金利で借りている
<金利0.5%のときの元利均等返済と元金均等返済の違い> | ||
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元利均等返済 | 元金均等返済 | |
借入金 | 3,000万円 | |
金利 | 0.5% | |
借入期間 | 35年 | |
毎月の返済額 | 77,875円(一定金額) | 最初のうち83,000円程度 後半 71,000円程度 |
支払利息 | 2,718,655円 | 2,642,156円 |
総返済額 | 32,718,655円 | 32,642,156円 |
金利が1%と高い場合には元利均等返済と元金均等返済で総返済額に大きな差額が生まれます。しかし、上記のように金利が0.5%と低金利下ではそこまで大きな差とはなりません。
元利均等返済の総返済額32,718.655円に対し、元金均等返済は32,642,156とその差額は76,499円です。毎月の返済額に余裕があり、急に金利上昇しても余裕で支払える場合を除き、変動金利の金利上昇リスクに備えて元利均等返済を選択するのがおすすめです。
③毎月の返済額に余裕はない
毎月の返済額に余裕があり、さらに繰上げ返済を機動的にできる余裕がある場合は別として、毎月の返済で生活費に余裕がない場合は、金利上昇時には元利均等返済の「5年ルール」「1.25倍ルール」の適用で急な返済額上昇を抑えるのが良いでしょう。
元金均等返済が最適な人
①固定金利
固定金利の場合には、金利は一定であるため「5年ルール」「1.25倍ルール」の適用はありません。元金均等返済は最初のうちは返済額が多くなりますが、それを返済できそうなのであれば、後で返済額が減って教育費がかかるときなどのちょうどローンの返済期間後半においては返済額の負担が減っていく上、総返済額は元利均等返済に比べて少なく済むので元金均等返済がおすすめです。
②変動金利でも返済に余裕がある人
毎月の返済に余裕があり、繰上げ返済をいつでもできる余裕がある場合には、「5年ルール」「1.25倍ルール」の適用は返済が免除されるわけではなく返済の繰延べてあるため、金利上昇時でも元金均等返済においてきちんと返済しておいた方が良いでしょう。
変動金利で元金均等返済を選ぶ場合、金利上昇時に返済額が急に増えても返済できる能力があるかどうか問われるため、元利均等返済よりも審査が慎重になる可能性があります。
借入時の年間返済額に対して、収入に対する負担率が低いなど余裕があるかどうかも審査対象となります。また、そもそも返済リスクを考慮して、変動金利の元金均等返済を取り扱っていない銀行もあります。