土地と建物はセット?土地先行で住宅ローンは利用できるのか
通常土地は住宅建築のため、分譲住宅のように土地付き物件で、住宅とセットで購入することが多いでしょう。
しかし、今後を見据えて土地のみを購入したいとき、または住宅を建築予定だが事情がありすぐには建てられないが土地のみ購入したいときに住宅ローンを利用することはできるのでしょうか。
ここでは土地購入に住宅ローンが利用できるのか、また土地先行で住宅ローンは借りられるのかについて解説します。
住宅ローンの利用条件
住宅ローンの金利は低い!
住宅ローンは、奨学金を除いたローンの中でもっとも金利が低いローンです。
ローンの種類 | 金利水準(年利) |
---|---|
住宅ローン | 変動金利0.4%前後 |
アパートローン | 変動金利1%後半~3% |
マイカーローン | 変動金利1%~3% |
ディーラーローン | 変動金利4% |
カードローン | 14.5% |
住宅や土地の購入は、個人にとって最大の買い物です。
例えば、0.5%で借入期間20年元利均等返済にて、3,000万円借りると支払利息は全期間で1,542,214円ですが、これが2%なら6,467,839円と約500万円近く支払利息が増えてしまいます。そして、毎月の返済も約13万円から約15万円と2万円増えてしまいます。
そのため、購入を借り入れで行うのであれば、できるだけ低い金利で借りたいと誰もが思うところでしょう。
住宅ローンの借入金額は個人が借りる最大の借入になることが多いですが、以下の理由からその返済が滞る可能性が低く、銀行にとっても利益があるため金利が低くなっています。
- 担保として住宅ローンの対象となっている土地建物が設定されている。
- 返済できないと担保となっている土地建物を手放すことになるが、住んでいる住宅に居住できなくなるのは困るため、住宅ローンの返済を最優先にしてくれる可能性が高い。
- 住宅ローンの返済がある場合、給与振込口座に設定される可能性が高く、メイン口座としてその他の取引につながることが多い。
- 担保の評価や返済能力の審査を入念に行う。
このように、土地の購入代金を借入金で購入するのであれば、住宅ローンを利用した方が断然お得になることがわかります。
では、土地のみを購入したいときに、住宅ローンは利用できるのかについて見ていきましょう。
住宅ローンの利用条件
住宅ローンの利用条件として、その借入資金が以下の通りに使われることが挙げられます。
- 自分または家族が住む住宅の建築、購入、増改築のための資金及びそれにかかる諸費用
- 借り換え資金またはそれにかかる諸費用
以上のことから、住宅を伴わない土地のみの購入時に住宅ローンを利用できません。
しかしながら注文住宅で土地を保有していない場合、住宅を建築するために土地先行で購入することはよくあります。土地を現金で購入するなら別ですが、自己資金がない場合には借入を行うしかありません。
住宅ローンの融資実行つまり銀行が不動産会社に資金を振り込むのは、住宅の引き渡しの完了時となります。そのため、住宅の引き渡しが完了しないと住宅ローンの融資は実行されないわけです。
分譲のように土地と住宅を同時に購入する場合は別として、注文住宅の場合は土地を購入してから、着工して数か月後に完成と引き渡しとなり、それと同時に住宅ローン融資実行となるわけですから、土地の購入代金支払いと住宅ローン実行に時間差が生まれてしまいます。
土地を借入金で購入し、注文住宅を建築する場合どうすればよい?
土地購入と住宅引き渡しにタイムラグ
住宅ローンは自分が住むための住宅購入に関わる資金使途であれば借りることができます。
そのため、当然自分が住む住宅が建つ土地の購入代金も対象になります。
ただ、住宅ローンの融資実行は住宅の引き渡しと同時となるため、分譲住宅であれば土地と住宅の購入代金の支払いと融資実行が同時となります。
土地を購入して住宅を建築する場合には他人の土地に勝手に建築するわけにはいかないので、まず土地を購入して所有権を自分に移転する必要があります。
そのため、①土地を購入(土地の購入資金支払)②住宅着工③建築作業④完成・引き渡し(住宅ローンの融資実行と住宅の購入資金支払)の流れとなります。
土地の購入資金を支払うタイミングと住宅の購入資金を支払うタイミングとにタイムラグが生まれます。土地を現金で購入する場合は別ですが借入資金で賄う場合、その時点では土地のみの購入となり住宅に関わらない上住宅の引き渡しもないため住宅ローンを利用することができません。
土地購入に住宅ローンを利用することができませんが、そもそも住宅建築のために購入する土地ですからその土地の購入資金も住宅ローンとして本来借りることができます。ただし、その資金はやはり住宅の引き渡し時にしか融資されません。そこで、土地購入時と融資実行(住宅の引き渡し)の間、資金を一時的に借りる制度があります。
つなぎ融資と土地先行融資
住宅建築のための土地の購入資金についても、住宅の引き渡しと同時に住宅ローンの融資を受けられます。しかし、土地先行での購入は資金を支払わなければならないため、住宅ローンの融資実行までの間、「つなぎ融資」または「土地先行融資」を受けることができます。
土地の購入代金だけでなく、建物着工にかかる費用も含めて借りることができます。
つなぎ融資
つなぎ融資とは、住宅の引き渡し時の住宅ローン融資実行時まで、土地にかかる購入資金をつなぎで借ります。返済は、住宅ローンの融資が実行されたらその住宅ローンの融資金で行います。
住宅ローン実行までの1年に満たない間の借入ではありますが、住宅ローンのように担保を設定せずに無担保で借りることになるため、金利は高くなり、年2~3%程度かかります。
一方で、担保を設定しないことから抵当権設定のための登記にかかる費用がかかりません。なお、仮登記をする銀行もありますが、その場合は本登記をするよりも登記にかかる費用は安くなります。
住宅の引き渡しまでの一時的な借入ですが、住宅の引き渡しが工期遅れなどで遅れると適用金利が高いことからその支払利息も高くなります。
土地先行融資(分割融資)
土地先行融資(分割融資)とは、住宅ローンは本来住宅の引き渡しと同時に融資実行となりますが、その融資実行を分割することをいいます。
住宅ローンを分割しているので、住宅ローンと同じ金利となり、適用金利はつなぎ融資に比べると格段に低くなります。
また返済を行う間は住宅ローン減税の適用を受けられます。
一方で、土地を担保として登記するため、その抵当権設定にかかる登記費用がかかり、10万円程度は登記費用がかかります。
住宅ローンの返済が土地の引き渡し後から始まるので、そのときには仮住まいの家賃も支払っているはずですからその返済負担は大きくなります。中には支払利息だけでよい銀行もあります。
<つなぎ融資と土地先行融資> | ||
---|---|---|
つなぎ融資 | 土地先行融資(分割融資) | |
金利 | 2~3% | 住宅ローンの金利と同じ |
担保 | 仮登記またはなし | 本登記 |
登記費用 | 安いまたはかからない | 高い |
融資手数料 | かかる | かかる |
住宅引き渡しまで | 支払利息のみ支払 | 土地購入時から返済が始まることもある |
住宅ローン減税 | × | 〇 |
借入金額により異なるため必ずどちらが良いとは言えないのですが、つなぎ融資では適用金利が高いことから、例えばつなぎ融資を3%で2,000万円借りると支払利息は半年で30万円もかかり、毎月支払利息を5万円程度支払う必要があります。
つなぎ融資自体には住宅ローン減税の適用はありませんが、住宅引き渡し後土地の購入代金を含めた住宅ローンの借入残高に対しては減税対象となります。
一方、土地先行融資(分割融資)を0.5%で2,000万円借りると支払利息は半年でわずか5万円程度となり土地購入後その返済として月額5万円程度の返済で済みます。
さらに、住宅ローン減税の適用が受けられる可能性があり、年末残高に対して0.7%の減税がされます。
住宅ローン減税は土地先行融資(分割融資)の場合で、住宅の完成日の2年以内に土地を購入している、または建築条件付きの土地を購入した場合に適用されます。
土地先行融資(分割融資)の場合は登記費用として10~20万円程度かかってしまいますが、おおむね土地先行融資(分割融資)の方が費用は安く済むでしょう。
土地先行融資は住宅ローンの一部で、担保も設定するので、完成予定の建物の図面や見積書などを添付のもと、本人が住む居住用住宅が建築予定であるかどうかを審査されます。
しかしながら上記2つの方法は、どの銀行も取り扱っているわけではありません。
どちらも、住宅購入資金のために借りる住宅ローンとセットで借りることになるため、実質好きな方を選ぶというよりはつなぎ融資または土地先行融資を取り扱う銀行の中で、返済総額の少なくなる銀行を選ばざるをえないという形になるでしょう。
上記の方法は、土地を購入してすぐに建築するために、土地の購入資金を一時的に借りる方法となります。
一方で、自分が住むための住宅を建築するために土地を購入したいが、事情によりまだ住宅建築できない場合はどうでしょう。
すぐに建築できない場合のローン
住宅を将来建てるための土地を購入したいが、すぐに建築できない場合にはやはり住宅ローンで借りることは難しくなります。
一番はその住宅を建築するときに土地を購入して、そのときに住宅ローンを借りるのが、借入金利が非常に低く、住宅ローン減税の適用を受けられるので、土地購入の最適な方法ですが、どうしても土地を購入したいということもあるかもしれません。
そんなときには、個人で土地を借入で購入するには以下の方法があります。
1.プロパーローン
プロパーローンとは、保証会社の保証のない銀行独自のローンをいいます。
保証会社を通さないため、銀行は返済されないリスクを自ら負います。この場合、保証人または連帯保証人が必要となります。
対象不動産に担保が設定されますが、銀行が負うリスクが高いことから金利は高くなります。また、審査も安定した収入があるかどうか、自己資金は豊富にあるかどうかも厳しくチェックされます。個人で借りることは難しく、事業者向けであることが多いです。
2.フリーローン
無担保で借りられるローンです。プロパーローンは担保としての土地等の評価を重要視しますが、フリーローンは担保が不要であるため土地の評価が低くても借りることができます。その代わり、プロパーローンと比べると借りられる金額が小さく、さらに金利は高くなります。
すぐに建築するなら住宅ローンが使える!
住宅ローンは変動金利なら0.4%程度、35年固定金利でも1.88%と非常に低金利で借りることができるローンです。
土地先行で購入してその土地に自分または家族が住む住宅を建築する場合に、住宅ローンを利用することが可能ですが、本来融資実行は住宅の引き渡し時となるため、それまでの間つなぎ融資をするか、または土地先行融資(分割融資)を利用することになります。
このつなぎ融資、土地先行融資(分割融資)は利用できる銀行が限られているため、土地を借入で行う予定の場合には、早めに利用できる銀行を探しておくのがおすすめです。また、不動産会社が利用できる銀行を紹介してくれることもあります。
建築がかなり先になってしまう場合には、住宅ローンを利用できない可能性が高いでしょう、
その場合に個人で利用できるローンはありますが、金利は高くなってしまい、審査も厳しくなります。さらに、その高い支払利息に対する住宅ローン減税の適用を受けることができません。もしくは、その土地をアパートなど不動産所得や事業所得として行う場合は、アパートローンや事業資金用のローンを組むことになります。
土地のみをローンで購入したい場合は、つなぎ融資課分割融資のどちらかの方法を選択しなければなりませんが、どちらも費用が発生したり、取り扱っている銀行がなかったりもします。
どうしても土地を低金利で購入しておきたいときは、取り扱いがあるか、融資タイミングはどうなっているかなどを確認して申し込むのが良いでしょう。