給与デジタル払いはいつ解禁?不正利用や払戻などの問題点について、わかりやすく解説
給与を電子マネー化して個人のアカウントに直接送金する、「給与デジタル払い」が注目を浴びています。
そこで、給与デジタル払いが実現すると、どんなことが起こるのか?実現するにはどんな問題があるのか?などをゼニエモン独自の視点で解説します。
給与デジタル払いに興味がある人は、ぜひチェックしてください。
ついに解禁!? 給与デジタル払いってどうなの?
デジタル化を目指している政府の思いもあり、キャッシュレス化が進んできました。
クレジットカードの発行枚数(※)は2020年3月末時点で2億9,296万枚と前値比で3.2%増加していることに加え、LINEPay(ラインペイ)や楽天Payなど多くの「〇〇Pay」が普及しています。
そして2021年4月19日のニュースでは、厚生労働省が『従業員の同意を前提としたうえで、電子マネーを扱う業者が安全性を担保した場合に認める』という給与デジタル払い新制度の案を示したとのこと。
現状は、労働基準法第24条で毎月支払う給与は「通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない(※)」と決められていますが、案が通れば「給与は電子マネーでもOK!」という従業員にはキャッシュレス決済口座に振り込むことが可能になります。
※銀行口座と証券口座への振込は例外で認められています。
また新しい時代の到来ですね!
でも、新しいものが導入されるときは必ずと言っていいほど不安が出てくるものです。
「電子マネーで受取ってしまったら、現金を使うときに困る!」とか、「利用場所が限定されちゃいそう。」とか、「電子マネー会社が潰れちゃったらどうするんだよ!?」とか。
ゼニエモン以外にも、いろんな不安を持ってしまう人がいることでしょう。
そこで今回は、そういった不安な箇所も含めて給与デジタル払いについて考えていきます。
給与が電子マネーに! 現金を使いたい場合はどうする?
まず海外では、給与受取専用の「ペイロールカード」というプリペイドカードが使われています。
日本での資産や取引実績が乏しい外国人は銀行口座を開設するのが難しいこともあり、ペイロールカードのお陰で銀行口座を持てない人も安心してお金を受け取れるようになりました。
また、ペイロールカードはデビットカードとしても、ATMのキャッシュカードとしても使える利便性があります。
例えば、電子マネーを取り扱うキャッシュレス決済事業者のサービスとつなげればスマホ決済・現金引き出しの両方がスムーズになるので、中には日本でもペイロールカードが導入されるのではないかという報道もあります。
ただ日本では、「資金移動業者」の決済サービスに給与を振込むことがメインで報道されていますが、新たな支払い方法は資金移動業者の決済サービスのほか、プリペイドカード、スマートフォン決済アプリへの入金、ICカードを使う電子マネーなども候補になると考えられます。
Payだけにこだわるのではなく、給与をもらう側の受取選択の幅を広げ、自由に選べるようにするのは良いことかなとゼニエモンは思っています。
しかし、いくら給与受取ができる電子マネーの幅を広げたと言っても、現金払いや銀行口座への振込など従来の給与の在り方はそのまま残るとも思います。
それのほうが安心!って思う方、やっぱり多いですよね。
「給与の半分は〇〇Payで、残り半分はいつもの銀行口座へ振り込んでください。」というのができれば良いですが、現実的には難しい(会社も経理もこれは大変)でしょう。
ですが、Payや決済アプリなどに振込まれたお金をATMで引き出せる、しかも手数料はかからないといった「使いやすくてお得ですよ」感は出さないと普及しないと思うので、この辺りも考えられているはずです。
銀行の定期預金金利アップといったキャンペーンも、Payのキャッシュバックキャンペーンもいわば「知ってもらって使ってもらう」「とにかく利用者を増やしたい」ということの表れです。
給与のデジタル払いを広めるなら、以下のようなインパクトのあるキャンペーンが出てくるのは確実と言えます!
<給与デジタル受取ならATMと振込手数料が月2回無料!>
<口座振り込みよりも電子マネーで受取った方が、ATMや振込手数料が今より抑えられます。>
給与をデジタルで支払われたといっても、現金が引き出せないのは困ってしまうので、ATMからは引き出せるようになるのではないでしょうか。
残高のあるうちに〇〇Payがなくなったら一文無し!?
先ほどキーワードとしてあげた資金移動業者とは、金融庁に登録をしてキャッシュレス決済口座を運用しているところを指します。
具体的には、PayPayやLINEPayなどが当てはまります。
今給与を振込んでもらっている『銀行』と、これから振り込まれるかもしれない『資金移動業者』の違いや仕組みについて確認してみましょう。
銀行 | 資金移動業者 | |
---|---|---|
監督官庁 | 金融庁 | 金融庁 |
許認可 | 許可制 | 登録制 |
保全方法 | 預金保険制度 | 供託※、保証、信託(現状はほぼ供託) |
保全額 | 1,000万円を上限 | 全額 |
払戻までの期間 | 数日 | 最低3ヶ月〜半年程度 |
不正利用された場合の補償 | 預金者保護法(無過失の場合は全額、軽過失でも3/4は補償) | 個社の約約款による(法による共通の保護規定は無い) |
※供託:金銭や有価証券等を国の機関である供託所(法務局等)に提出し、管理を委ねること。
参考ページ:日本労働組合総連合会HP
表を見ると違うところは分かるものの深くは分かりにくいので、特に気になるところを抜粋して伝えていきます。
銀行はいきなり倒産することがないように厳しい条件が定められていて、それらをクリアして初めて許可が下りて営業をすることができます。
それに対し、資金移動資金業者は登録条件を満たせばすぐに営業することができます。
金融庁から許可をもらうのと登録するのでは重みが異なり、利用者の信頼や安心感も違ってくるのではないでしょうか。
銀行では払い戻しまで数日かかりますが、資金移動資金業者は最低でも3か月から半年はかかります。
支払いがあるといってもその間は引き出すことはできないので、事前に資産の分散をして管理しておくことが大切になります。
不正利用されたとき、銀行は預金者保護法という法がありますが、資金移動業はそれぞれの会社で対応が決められています。
そのため、給与の振込を〇〇Payにすると決めたときは、補償はどうなっているのか個人で確認したり、補償内容を見てからどれにするか決めたりすることが大事です。
給与を振込する資金移動業者が万が一なくなってしまったときも、基本的に残金は戻ってくるので一文無しは避けられそうです。
ただ払い戻しされるまでの日数が長く、その間だけ一文無しになることも考えられるので、そのまま利用するのではなく別の口座に一定額入金しておく対策も必要でしょう。
今はスマホやパソコンに慣れ親しんでいる方も多いので、デジタル払いを導入する動きは悪くないですが、セキュリティや払い戻し期間などを含め利用者にどこまで安心してもらうかが今後の大きなポイントとなりそうです。
給与の支払いに現金、銀行口座と証券口座への振込のほか、新しく決済アプリやPay、ICカードつき電子マネーなどが加わり、安心できてなおかつシンプルな仕組みではないと、私たち一般人はどれを利用すか迷ってしまいます。
今は海外からの労働者も増えたこと、決済アプリが広がっていることから一定の需要があると見込まれていますが、利便性よりも先に現金化しにくい、払い戻しが遅い、セキュリティの不安、店舗窓口のない対応への不満などを解消しなければ、安易に使うことはできません。
だって、生活の糧である給与ですからね!
導入になれば、スマホ決済アプリを提供している企業が先立って始めることになると思いますが、慣れ親しんで使うのは5年もしくは10年くらい先になるような予感があります。
LINEPayの利用者も多くいますが、行政が次々にLINE利用を停止していることもありますし、給与のデジタル払いについては話し合いがまだまだ続くでしょう。
給与のデジタル払いが解禁になったら?
例えばあなたがいつもPayを使っているとしたら、銀行口座やクレジットカードからチャージすることなく買い物ができるようになります。
だって、給与がメインPayに入っているわけですから。
銀行口座から直接引き落としになるデビットカードのスマホ版というイメージで考えれば、分かりやすいですよね。
そして現金が必要なときは、アプリかカードでATMから現金を引き出す形を取り、とにかくスマホひとつでできる利便性を推していくでしょう。
ゼニエモンの近所では、「お金の価値や重みを忘れてほしくないし、現金が一番使いやすい。」として給与を手渡ししている会社もあります。
従業員の方も家に持って帰って、こっちの銀行は住宅ローンの引き落としがあるから入金、いくらはお小遣い、いくらは生活費と分けられて便利だと言っていました。
便利さはそれぞれなので、あくまでも給与デジタル払いは選択のひとつとして利用していきたいですね。