新制度のつみたてNISAとは?NISAとなにが違うの?わかりやすく解説!
お金を積み立てて投資を行う「積立投資」を行うと、本来課税される税金が非課税になるのが「つみたてNISA制度」です。
つみたてNISA制度による口座は、40代以下の若い世代を中心に口座数を伸ばし、2021年3月末時点で360万口座を超えました。
つみたてNISAで投資する投資信託の残高は、2021年7月末時点で6兆円にも上っており、人気ぶりがうかがえます。
まだ始めてない方でも、つみたてNISAを始めるのが遅いことはありません。
つみたてNISAとはどんな制度か、今度始まる新NISA制度との違いか何か、分かりやすく解説します。
つみたてNISAとは?
つみたてNISA
つみたてNISA | |
---|---|
利用できる方 | 20歳以上の方 |
利用限度額 | 40万円/年 |
投資可能商品 | 長期運用に適した一定の投資信託 |
投資可能期間 | 2018年〜2037年 |
非課税期間 | 新規投資から最大20年間 |
運用管理者 | 本人 |
払出制限 | なし |
ロールオーバー | × |
現代社会の仕組みでは、人が利益を得ると課税されます。
証券投資も例外ではなく、投資信託などの金融商品に投資して利益を得ると、一律20.315%が分離課税されます。
この税率は給与所得等にかかる総合課税による所得税の税率とは異なるため、本業の所得が低いとその税率よりも高くなる人もいます。
この利益に対する課税が、つみたてNISAを使えば全て非課税になります。
つみたてNISAでは、投資用の証券口座とは別につみたてNISA専用口座をつくります。
その専用口座から投資して得られた利益は、全て非課税になります。
ただ、このつみたてNISA口座から投資できる金融商品には、主に以下の条件があります。
つみたてNISA口座から購入できるのは、金融庁が指定した投資信託のみとなります。
条件として、買付手数料が無料で、保有期間中のコストが一定以下で低コストであること、デリバティブなどのリスクの高い運用が組み込まれていないこと等があります。
長期の運用に適した投資信託に限定されているので、長期的な運用がしたい人には向いているでしょう。
「今1万円分買う」という随時購入ではなく、「毎月1万円自動購入する」など一定期間に購入を繰り返す設定で利用することです(必ずしも同じ金額でなくても良い)。
新規で年間40万円までの投資が認められています。
売却代金でも、その枠を消費することになります。
例えば、毎月3万円ずつ購入し、12月に全額売却してその売却代金で40万円分つみたてNISA口座から投資することはできません。
上記の条件は、投資に特別投資について詳しくなくても、誰でも、長期の積立てによる投資により資産形成できるための制度設計がされています。
つみたてNISAのメリット
日本の金利はマイナス金利であり、預金金利は平均0.03%〜0.06%と長く定期預金に預けても全く増えない状況です。
例えば、年利0.03%の積み立て預金に毎月2万円を20年間預け続けても、受け取れる利息は約1万1,500円です。
一方、利回り年3%の投資信託に毎月2万円を20年間投資し続けると、約595万円になり、20年間の運用で得られた利益は約115万円となります。
同じ毎月2万円を払っていても、114万円も運用の差が生まれるのです。
このような状況から、将来年金が減る、退職金も期待できないなどの不安から自分で資産を形成しておかなければならないと考えている人は多くいます。
だからといって、余裕資金を全部利回りの高い金融商品で運用すればよいというものではありません。
金融商品には、株式・FX・仮想通貨・投資信託・債券など様々なものがありますが、どの金融商品にもリスクがあります。
定期預金は、少ない利息しか受け取れませんが元本が保証されています。
一方で、株式などの金融商品には高い利回りが期待できる分、逆に損をしてしまうリスクがあります。
そのようなリスクを最小限に抑えながら、安定的な利回りで資産形成できるのが積み立て型の投資信託です。
投資信託は基本的に株式に投資されており、株式自体日々価格が変動するものですし元本保証はないので、買付価格より売却時の価格が下回っていれば損をします。
ただ、株式に直接投資するよりも、投資信託で投資することでリスクを低減できるのです。
その理由は、投資信託は小口で集めた資金を大きなまとまりにして、プロのファンドマネージャーが銘柄選別、売買を行っているからです。
大きなまとまりにすることで、たくさんの銘柄に分散投資することができます。
複数銘柄に分散投資することで、一つの企業の株価変動に大きく左右されて資産が変動するのを防ぐことが可能です。
また、積み立て型の投資信託を選ぶと、価格が高いときも安いときも毎月変わらず買い付けるので買付価格を少しずつ下がります。
買うときの水準が高いのか安いのか予想することは難しいですが、価格は大きく見ると景気変動と同じく4〜5年の間隔で一番の安値、高値を迎えます。
長期で毎月購入していくことで、買付タイミングを分散させて一番の高値で買うことを防ぎます。
一番の安値で買うことは難しいものの、できるだけ買付価格を安くすることで、売却時に利益を出すことができるのです。
このような買い方は、一番の安値で一括購入するケースに比べると利益額は小さくなりますが、損をするリスクを減らすことができ、年3〜5%の利回りを目指すことができます。
このように、投資信託を積立で長期購入することは、損をしないように利益を上げられる投資方法なのです。
以上の投資方法で投資できるよう、つみたてNISAには以下のような条件が設けられています。
つみたてNISAは、年間40万円までの新規投資が20年間非課税になります。
損するリスクを低減するには、長期間積立投資を行うことが重要です。
つみたてNISAは20年と非常に長い間非課税になるので、期間切れを気にせずにじっくり長期で運用することができます。
また、売却しない限り、分配金や売却益も20年間非課税です。
つみたてNISAの投資対象となる投資信託は、以下のものです。
- 信託報酬が一定以下
- デリバティブを含まない
- インデックス投信中心
つみたてNISAでは投資信託の中でも、上記の条件に該当するものしか投資できません。
投資信託は、運用をプロにお任せしている分、保有期間中に信託報酬というコストがかかります。
この信託報酬は、運用が良くても悪くても必ずかかります。
つまり運用益が同じ場合、低コストの方が利益は大きくなり、長期になるほどその差も大きくなっていきます。
つみたてNISAは長期運用を前提とした制度なので、信託報酬が低コストなものに限定しているのです。
また、投資信託の中には高いリスクのあるデリバティブが組み込まれた投資信託がありますが、そのような商品は対象外となっています。
そして、対象商品はほとんどがインデックス投信となっています。
インデックス投信とは、日経平均やTOPIXなど株価指数に基準価額を連動させる投資信託です。
ファンドマネージャーによる銘柄分析が不要なので低コストとなっており、このような指数は銘柄数が多くかなりの分散投資になっています。
長期の積立投資を行うと、損をするリスクを低減することができます。
投資信託の基準価額は1万口=1万円ですが、その価格が毎日変動します。
毎月金額指定で購入すると、価格が下がれば多い口数を買い、価格が上がれば少ない口数しか買えません。
例えば、毎月1万円を積立投資した場合、基準価額8,000円なら1.25万口の買付、基準価額が12,000円なら0.83万口しか買付しない…ということです。
このように、毎月一定金額で投資することは、価格が高いときには少なく買い、価格が安いときにはたくさん買うことができます。
そして結果的に1万口あたりの基準価額を積立ごとに下げることができ、この投資方法をドルコスト平均法といいます。
実際にこの方法で1985年から20年間毎月積立投資した結果があります。
保有期間5年では損する可能性が8%・8%以上の利回りとなる可能性が高かったのが、保有期間20年では損する可能性が0%・利回りは2〜6%の可能性が高くなるという結果が出ています。
また投資対象については、国内株式のみでなく外国株式も投資対象に組入れる方が利益は大きくなることがわかっています。
投資信託は100円以上1円単位で購入できるので、例えば毎月1万円投資するなら、5,000円はTOPIXを対象とした投資信託、3,000円は米国株式が投資対象のもの、残り2,000円は新興国株式が対象のものと、分散させて投資するのがおすすめです。
また、自分で設定するのが難しい人は、1つの投資信託の中で日本株式30%、外国株式30%、REIT30%と投資配分が決定しているもの選ぶのも手です。
NISAの種類は3つある
テキスト | 一般NISA | つみたてNISA | ジュニアNISA |
---|---|---|---|
利用できる方 | 20歳以上の方 | 20歳以上の方 | 未成年 |
利用限度額 | 120万円/年 | 40万円/年 | 80万円/年 |
投資可能商品 | 株式、株式投資信託等 | 長期運用に適した一定の投資信託 | 株式、株式投資信託等 |
投資可能期間 | 2014年〜2023年(延長あり) | 2018年〜2037年 | 2023年で終了 |
非課税期間 | 新規投資から最大5年間 | 新規投資から最大20年間 | 新規投資から最大5年間 |
運用管理者 | 本人 | 本人 | 親権者 |
払出制限 | なし | なし | あり |
ロールオーバー | ○ | × | ○ |
投資で得た利益が非課税になるNISA制度は、つみたてNISAも含めて3種類あります。
NISAは1人1口座しか開設できず、20歳以上の人は「一般NISA」か「つみたてNISA」しか選べません。
後から変更することもできますが、既に投資枠を使用していたり、変更できる期間を過ぎていたりすると、翌年以降しか変更できない点に注意が必要です。
一般NISAとつみたてNISAでは、主に以下のような違いがあります。
1.投資対象
一般NISAは、株式・投資信託・ETF・REITに投資可能で、投資対象が広いのが特徴です。
投資信託への投資もでき、購入方法は一括でも積立でも問題ありません。
つみたてNISAは投資対象が限定されていることから、初心者でも銘柄選びに失敗しにくいメリットがありますが、投資経験者にとっては逆にデメリットとなり得ます。
投資経験がある人や株式に投資したい場合は、一般NISAが最適です。
2.投資金額
一般NISAは年間120万円、つみたてNISAは年間40万円となっており、一般NISAの方が投資できる金額は大きくなります。
年間40万円以上投資したい場合は一般NISAが最適です。
投資信託の積立なら、一般NISAは毎月10万円まで、つみたてNISAは毎月約3万3,300円まで投資可能です。
3.非課税期間
つみたてNISAは、非課税期間が20年間と非常に長いのが特徴です。
運用期間は長いほど損するリスクが低減されるため、長期でコツコツ運用して着実にリターンを得ることができます。
投資経験が浅い方には売買タイミングの見極めが難しいので、つみたてNISAを利用するのがオススメでしょう。
一方、一般NISAは非課税期間が5年間となっています。
つみたてNISAの20年と比べると短く、5年以内に売却しないと課税口座に移されてしまいます。
ただ、一般NISAには「ロールオーバー」という制度があります。
ロールオーバーとは、翌年度の新規投資枠を使用して非課税期間を延長する制度です。
一般NISAはこのロールオーバーがあることで、非課税期間を最大10年延長することができます。
初心者の方や長期でコツコツ運用したい方はつみたてNISA口座を、投資経験者や株式にも投資したい方は一般NISAを選ぶのがおすすめです。
新制度のNISAとの違い
つみたてNISAは2037年までの制度ですが、一般NISAは2023年までとなっています。
同じく2023年までとなっていたジュニアNISAは廃止が決定しましたが、一般NISAは延長が決定しました。
ただし、全く同じ制度で延長されるわけではなく、内容を変更して新NISAとして2024年にスタートします。
新NISAは一般NISAがベースにあるので、株式やETFなどに投資可能であることなど大まかな内容は同じです。
新NISA
対象者 | 日本在住の20歳以上の方 |
---|---|
非課税対象 | 【2階】投資信託、株式、ETF、REITなど (レバレッジ型を除く) |
【1階】金融庁指定の投資信託を積立により投資 | |
非課税投資枠 | 【2階】102万円 |
【1階】20万円 | |
非課税投資可能期間 | 2028年まで |
非課税期間 | 5年間 |
ロールオーバー | ○ |
新NISAは、一般NISAと投資できる対象は同様ですが、投資する条件として指定の投資信託への積立投資を行う必要があります。
この積立投資をしている人だけが2階の株式など一般NISAと同様の投資が可能になります。
2階の投資に不可欠な1階部分は上限が20万円ですが、20万円全額投資する必要はなく、積立投資を行うだけで問題ありません。
また、現行の一般NISAでは証券会社で取り扱うほとんどの商品に投資できました。
しかし、新NISAでは現行で投資できていた、投機性が高く先物取引を内包した投資信託に投資できなくなります。
例えば、日経平均と逆の動きをする日経平均ベア、日経平均の2倍の動きをする日経平均ダブルベアなどは投資対象から除外されます。
また、上場株式でも投機性の高い整理銘柄、監理銘柄なども除外されます。
さらに、投資金額も変更されます。
一般NISAでは年間120万円まで投資可能でしたが、新NISAは1階部分の20万円の積立投資が必須条件、さらに2階部分の株式や投資信託の購入は102万円までとなります。
ただ、新NISAに変わる前から一般NISA口座を開設していた場合、または投資経験者は2階部分の上場株式投資のみ行うこともできます。
※2階部分のみの場合、投資信託・ETFへの投資は不可
また、新NISAの1階部分は非課税期間終了後、つみたてNISAへ移行できるようになる予定なので、予定通りなら25年間非課税になる計算です。
つみたてNISAを利用する際の準備
つみたてNISA口座を開設するには、まず金融機関を選ぶ必要があります。
投資信託を扱ってない株式専門証券会社や、一部スマホ証券などは開設できないことがあるので、注意しましょう。
ただ、つみたてNISAの金融機関は口座を開設できるのであれば、どこを選んでも基本的には同じです。
本来は金融機関ごとに買付手数料の違いがあるのですが、つみたてNISAに限ればどれも無料なので違いはありません。
また、投資対象も限定されているので、投資信託の取扱数が多い証券会社である必要もないでしょう。
つみたてNISA口座の開設には、まず証券口座の開設が必要です。
証券口座はつみたてNISA口座と同時に手続きすることが可能ですが、つみたてNISA口座の開設には必ず書面での手続きが必要です。
時間がかかるケースもあるので、余裕を持って申込をしましょう。
なお、口座を開設する前の注意点として、以前NISA口座を開設したことがないか確認してください。
NISA口座は1人1口座しか開設できず、手続き後に税務署で口座を開設したことがないか審査されます。
既にどこかで口座開設していれば開設不可となり、手続に時間がかかってしまうため、過去にNISA口座を開設していないか確認しておきましょう。
必要な本人確認書類は、マイナンバー通知書と本人確認証またはマイナンバーカードで、印鑑は必要ないことがほとんどです。
本人確認をネット上で行う場合は本人確認証のアップロードにより認証を行い、書類手続で行う場合にはコピーをとって添付します。
つみたてNISAを利用する際の注意点
つみたてNISAを利用しているうちに、投資経験を積むと他の商品に投資したいと考えるかもしれません。
その場合、一般NISAへの変更、または課税される一般口座からの投資が必要になるため注意が必要です。
ただ、つみたてNISAの口座を一般NISA口座に変更しようとする場合、既に投資していると翌年以降の変更しかできません。
つみたてNISAと一般NISAどちらが自分に適しているか、よく見極めてから選択しましょう。
また、つみたてNISAは20年間と長期的に積立投資することが前提となっています。
積立自体は銘柄さえ選んでしまえば、後は自動で投資されるので手間はかかりません。
一方で、基準価額が変動すると資産額も変動するため、長期的に同じものを買い続けるというのは精神的に難しいことがあります。
例えば、大きく値上がりすれば売りたくなりますし、大きく値下がりすれば買いたくなくなるかもしれません。
つみたてNISAで大事なことは、最初の設定を同様に長く続けることです。
途中で売ったり、買わなかったりするのはよくありません。
どうしても気になる人は、基準価額や資産額をあまり見ないようにするのもおすすめです。
つみたてNISAでどのぐらいお得になる?
つみたてNISAは、上限いっぱいまで投資すると毎月3万3,333円まで投資できます。
例えば、毎月3万円を20年間利回り年3%の投資信託に投資すると、資産額は984万9,060円となります。
この場合、運用益は264万9,060円ですが、これにかかる税金は非課税です。
仮に課税されたら、約54万円も税金として支払わなければいけません。
これが非課税になるのは、かなりお得といえます。
実際につみたてNISAを運用している人は、2021年6月時点で保有者平均リターンが20%となっており、2014年から毎年40万円投資した人は336万円(投資金額は280万円)になっています。
まとめ
つみたてNISAを始める前に、自分の投資スタイルが一般NISAとつみたてNISAのどちらに適しているか見極める必要があります。
ジュニアNISAは2023年に終了が決定し、一般NISAはつみたてNISAの内容を盛り込みながら延長が決まりましたが、2028年までの運用となっています。
その一方で、つみたてNISAは2037年までと、あと10年以上も制度が続くことが決定しています。
つみたてNISAは、金融庁が目的とする国民の長期の資産形成と株式市場の発展という目的に適合しており、2038年以降も延長になる可能性はかなり高いです。
そのため、長期投資を目的として、できるだけ長くコツコツ投資を続けると良いでしょう。
つみたてNISAを始めたら、基準価額の変動に惑わされずに積立投資を続けることが大事です。
いつ始めても遅くはありません、将来のために長期的な資産形成を始めてみましょう!